21世紀初頭に急増
21世紀初頭、日本で株式を新規公開(IPO)する企業が急増した。具体的には、2000年(ITバブル期)と、その後の2004年、2005年、2006年だ。しかし、2008年にリーマンショックが起きて急減した。
2004年
2004年、株式新規公開(IPO)件数は、175社だった。その前年の2003年は、121社だった。年間では、「ITバブル」当時の2000年に次ぐ大量公開となった。
このIPO件数は、日本の株取引所に上場した企業の合計数だ。具体的には、東京証券取引所など全国5か所の取引所と、新興企業向け市場「ジャスダック」である。
増加した理由
IPOが増加した理由は、以下の通りだ。
- ・景況感が改善した。
- ・一部の市場が上場要件を緩和した。
日本のIPO件数は、2000年が最多だった。204社を記録した。
その後、2003年までは一貫して減少していた。
2003年までは、デフレ懸念などで景気の見通しが暗かった。
しかし、2004年になると、景気拡大への期待から、企業の業績見通しが好転した。
これに伴い、IPOも2004年に再び増加に転じた。
2004年の年間件数は、過去2番目に多かった2001年の169社を超えた。
具体例:テレビ東京の上場
2003年8月5日にテレビ東京が東証一部に上場した。
当初は2002年の上場を目指したが、景気悪化で延期していた。
2004年というタイミングになったのは、2003年後半から2004年にかけてテレ東の業績が向上し、相場も好転してきたためだ。
大和証券SMBCの柴山珠樹・公開引受部部長は当時、「2003年までは、業績の見通しが不透明なため、証券会社の審査段階で、上場を見送らざるを得ない新興企業も多かった」と分析した。
上場時の初値が公開価格以上となる「不敗神話」
2003年9月以降、新規株式公開(IPO)銘柄は、上場した131銘柄すべてが、上場時の初値が公開価格以上となる「不敗神話」が生まれた。
株価が上がれば、上場時の新株発行による資金調達額も増える。
このため、株式市場が活況のうちに、上場したいという企業が増えた。
マザーズなどの上場条件・審査基準の緩和
上場ラッシュには、新興企業向け市場の上場条件・審査基準の緩和も影響していた。
東証の新興企業向け市場「マザーズ」は2002年5月、上場要件の一つであった「事業の新規性」を排除して、高い成長性がある新興企業に対し、業種を問わず広く門戸を開いた。
この結果、ハイテクやインターネット関連だけでなく、サービス業などの企業も上場を目指すようになり、マザーズ上場数の急増が全体の上場企業数を底上げした。
証券会社の収益源に
証券会社にとっても、IPO関連業務は、大きな収益源となった。具体的には、企業の新規公開を手伝う業務である。
証券会社は、株式引き受け手数料などを受け取れる。ネット証券の参入で株式売買委託手数料が値下がりする中、貴重な稼ぎ源となった。
このため、証券会社の方が積極的に上場予備軍を発掘し、熱心に上場を勧めるようになった。
用語解説
IPOとは
IPOとは「Initial Public Offering」の略である。企業の新規株式公開を指す。UFJつばさ研究所によると、2004年1~6月に株式を新規公開した企業数は69社で、2003年同期比で14社増加した。景気回復と株式相場の上昇を受け、新興の中小企業などによるIPOが活発化し、投資対象として、個人投資家を中心に人気が高まっている。
公開価格とは
証券会社が、引き受けた新規公開株式を投資家に売り出す時の一株当たりの価格のこと。これに対し、株式市場に上場した時に最初についた値段を初値と呼ぶ。初値が公開価格を上回る傾向にある時は、値上がりを見込んで、公開価格で買おうとする投資家が増え、新規公開銘柄に人気が集まる。